債券売却の際の経過利子の取扱い

はじめに

 平成25年度税制改正により、平成28年1月以後、公社債税制が抜本的に改正され、法人保有の債券を売却する際の取扱いが変わりました。結論から言うと、とても分かりやすくなりました。

経過利子とは

 A社は債券を保有しており、利子を毎年6月と12月にそれぞれ半年分受け取るとします。
3月にA社がB社に債券を売却した場合、B社が6月に受け取る半年分の利子のうち、A社が債券を保有していた1月~3月分の利子は、A社の取り分です。そこで、債券を購入する際にB社はA社に3ヶ月分の利子を支払います。このように、買手が売手に支払う利子相当額を経過利子といいます。

税制改正後の経過利子の処理

 平成28年1月以後に支払いを受ける利子等は、自己の保有期間にかかわらず、源泉徴収された所得税額(及び復興特別所得税額)の全額を所得税額控除できるように税制改正されました。これにより、日本証券業協会や東京証券取引所などの規定が改正され、経過利子の受け渡しの際に源泉税相当額の減額が行われなくなりました

買手の会計処理(税制改正後)

 3月20日と9月20日に利払いが行われる利付債(額面4,000円、表面利率2%)を6月20日に売却したとします。買手は9月20日に40円(4,000円×2%×6/12月)の利子の支払いを受けますが、そのうち15%となる6円(便宜上、復興特別所得税額は考慮しない)が源泉徴収され、手取りは34円になります。経過利子は20円(4,000円×2%×3/12月)となります。

<購入時>

(借方)有価証券 2,000 (貸方)現金預金 2,020
    前払金 20
   ※経過利子は前払金で処理し、利子受取時に控除するのが一般的です(法基通2-3-10)。

<利子受取時>

(借方)現金預金 34 (貸方)受取利息 20
    源泉税 6       前払金 20

 買手が源泉徴収された6円は、買手の保有期間にかかわらず、所得税額控除により全額が法人税から控除できることになりました。これにより、売手に支払う経過利子は20円となり、売手の保有期間に対応する源泉税相当額3円を減額する必要はなくなりました。

買手の会計処理(税制改正前)

 前述と同じ前提とします。税制改正前は道府県民税利子割があったため源泉税率は20%ですが、簡略化するために15%で計算します。

<購入時>

(借方)有価証券 2,000 (貸方)受取利息 2,017
    前払金 17

<利子受取時>

(借方)現金預金 34 (貸方)受取利息 20
    源泉税 6        前払金 17
               雑収入 3

 買手が源泉徴収された6円のうち、所得税額控除により法人税から控除できるのは、買手の保有期間に対応する3円だけです。したがって、売手に支払う経過利子は、20円から源泉税相当額3円を減額した17円となります。

 この結果、売手は経過利子として17円しか受け取れず、売手が保有していた期間に対応する源泉税相当額3円は所得税そのものではないため、所得税額控除により法人税から控除できません。実質的に所得税と法人税が二重課税になっています。