財産分与

財産分与とは

 民法768条1項は、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求できる」と定めています。財産分与請求権の性質は、①婚姻中に蓄積された夫婦財産の清算、②離婚後の扶養、③損害賠償(慰謝料)のいずれかまたはこれらが混在したものと解されています。

財産を渡す側の税務処理

 金銭で渡す場合は、課税関係は生じません。しかしながら、不動産など金銭以外のものを渡す場合、財産が値上がりしていれば、所得税(譲渡所得)が課税されます。

【計算例】
財産分与時の不動産時価 5,000万円
不動産購入価額(取得費)4,000万円
譲渡費用(登記費用、仲介手数料等) 500万円
<譲渡所得金額> 5,000万円-4,000万円-500万円=500万円
<税額> 500万円×20.315%=1,015,700円(100円未満切捨)
※長期譲渡所得の場合 所得税 15%、復興特別所得税 0.315%、住民税 5%

 普通に考えると、財産をもらう側でなく、渡す側が課税されるのは、不思議な感じがします。学説が様々ある中、最高裁昭和50年5月27日判決により、不動産などの財産分与は所得税法33条1項にいう「資産の譲渡」に当たり、「財産分与によって分与義務の消滅という経済的利益(その額は分与した資産の時価)を受けている」ことから、その譲渡益を所得税の課税対象とするとされました。本判決についても、様々な批判もあったのですが、同主旨の最高裁判決が続き、所得税基本通達(基通33-1の4)も整備されました。ただ、なんとなくモヤモヤしますね。

 不動産を財産分与する場合は、分与時の時価(相続税評価額ではない)を算出する必要があります。また、離婚成立後に財産分与が行われることから配偶者に対する譲渡には該当しないため、居住用不動産の場合、「3,000万の特別控除の特例」の適用を受けることができます。

財産をもらう側の税務処理

 財産分与請求権に基づく取得であり、贈与による取得ではないことから、贈与税は課税されません。但し、贈与税や相続税を免れるために離婚で財産分与が行われた場合は、分与財産すべてに贈与税が課税されます。また、財産分与が婚姻中の夫婦の協力によって得られた財産以上であり、あらゆる事情からみても多すぎると判断された場合は、その多すぎる部分に贈与税が課税されます。

 財産分与により不動産を取得した場合は、所有権移転登記に対して登録免許税(固定資産税評価額×2%)が課税されます。

 不動産所得税については、財産分与が婚姻中の夫婦の協力によって得られた財産の清算(清算的財産分与)の場合は課税されません。但し、慰謝料や離婚後の扶養を目的としている場合は、課税されます。