消費税と寄附金の関係 <第2回>

はじめに

 消費税では、寄附金は対価性がないことから不課税取引とされています(前回ブログ)。

 しかしながら、買手(発注者)において、通常の取引価額(時価)を上回る部分について寄附金認定された金額は、課税取引になります。非常にわかりづらいので具体的事例で説明します。

具体的事例

 工事業者X社(受注者)は、子会社C社(発注者)に対して800,000円で建設工事を行ったが、C社の税務調査で、通常の工事価額は500,000円であるとして差額の300,000円を寄附金認定された。

C社の会計処理

<申告仕訳>
(借方)建物 800,000   (貸方)現金 880,000
    仮払消費税 80,000

<正当仕訳>
(借方)建物 500,000   (貸方)現金 880,000
    寄附金 300,000
    仮払消費税 80,000

法人税】子会社に対して通常の価額より高額な価額で工事を行った場合、子会社においてその差額は原則として寄附金になります。(修正申告上の処理/寄附金300,000円を所得減算、寄附金の損金不算入限度額計算、建物の取得価額減算)

【消費税】課税資産の譲渡対価の額に課税されます(消法28)。対価の額とは、課税資産の価額(いわゆる時価)ではなく、当事者間で授受するとした金額をいいます(消基通10-1-1)。したがって、通常の価額(時価)が500,000円の工事の場合であっても、実際に取引した工事価額800,000円が対価の額となり、仮払消費税は80,000円になります。結果として、寄附金300,000円に対する仮払消費税30,000円が発生する形になります。(修正申告上の処理/処理不要

裁決事例

 上記の事例に関連して、国税不服審判所の裁決(平成22年9月21日)があります。

 C社の修正申告を受けて、工事業者X社は、寄附金認定された部分の金額300,000円には対価性がないものとして、この請負売上に係る仮受消費税30,000円の減額を求めて更正の請求を行いましたが当局に認められませんでした。これを不服として国税不服審判所に審査請求したものですが、上記の理由により棄却されました。(金額は上記事例による)

C社の寄附金認定に伴うX社の会計処理

<申告仕訳>
(借方)現金 880,000   (貸方)工事売上 800,000
                  仮受消費税 80,000

<更正の請求でX社が主張した仕訳>
(借方)現金 880,000   (貸方)工事売上 500,000
                  仮受消費税 50,000
                  受贈益 330,000

<正当仕訳>
(借方)現金 880,000   (貸方)工事売上 500,000
                  仮受消費税 80,000
                  受贈益 300,000

まとめ

 買手(発注者)において、通常の取引価額(時価)を上回る部分について寄附金認定された金額は、当事者間で実際に取引した金額に含まれるため、消費税法上、課税取引になります。法人税法と消費税法で考え方が異なるため要注意です。非常にわかりづらいですね。