フリーレント期間のある支払賃料の計上時期

2通りの処理方法

 フリーレント期間のある支払賃料の費用計上の考え方は、2通りあります。一つは、フリーレント期間中は費用計上せず、実際に賃料を支払った期間から費用を認識する処理。もう一つは、賃料総額をフリーレント期間を含む賃借期間で按分し、賃借期間にわたって費用計上する処理です。

税務上の計上時期(法人税)

 税務上の計上時期はどうなるのでしょうか。フリーレント期間のある支払賃料(受取賃料)については、法人税法及び消費税法上、明確な取扱いが示されていません。

 税務上、販管費の計上時期は、債務確定基準によるものとされています。①債務が成立していること、②債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、③金額を合理的に算定できること、の3要件をすべて満たしている場合です。

 フリーレント期間のある賃貸借契約は、通常、中途解約した場合、フリーレント期間中の賃料相当額の支払義務が生じます。これは、中途解約しないことを条件にフリーレント期間中の賃料相当額が免除又は値引きされたものであり、一方、中途解約した場合に支払われる賃料相当額は、違約金の性格を有しているものと考えられます。

 したがって、契約当初に賃料総額が債務として成立するものではなく、実際に賃料を支払うべき各月において月額賃料の額が債務として確定したと考えられることから、税務上は、実際に賃料を支払った時期から損金の額に算入すべきものであり、按分による計上は認められないと思われます。

税務上の計上時期(消費税)

 消費税法上の賃借料の課税仕入れの時期は、契約等により賃料の支払いを行うべき日とされています。フリーレント期間中は、賃料の支払いを行うべき日がないことから、課税仕入れの支払対価の額はないことになります。したがって、実際に賃料を支払った期間が、課税仕入れの時期になると思われます。

裁決事例

 フリーレントに関しては、国税不服審判所の平成30年6月15日裁決があります。賃借したビルの一部を転貸していたわけですが、ともにフリーレント期間のある契約であり、この場合、賃借料及び賃貸料は、賃料総額をフリーレント期間を含む賃貸借期間で按分して計上することは認められないというものです。詳細は、国税不服審判所のホームページを参照してください。

例外

 実取引では特殊な場合を除いてないと思われますが、もし、実際に支払う賃料総額にフリーレント期間中に対応する額が含まれており、賃料の免除又は値引きでないことが明白な場合は、単なる賃料の後払いであるため、按分による計上も認められるのではないでしょうか。

 <法法22、法基通2-2-12、消基通11-3-1、消基通9-1-20>