宗教法人が所有する不動産の売却
はじめに
宗教法人が所有する不動産を売却した場合、その損益は税務上どのようになるのでしょうか。
不動産の使用目的が収益事業と非収益事業とで取扱いは異なるのでしょうか。
原則
収益事業のために使用していた不動産を売却した場合、その売却損益は、収益事業の付随行為に係る損益として課税対象になります(法基通15-1-6(6))。
他方、非収益事業のために使用していた場合、その売却損益は、非収益事業の損益となり課税されません。
特例
不動産を収益事業のために使用していた場合でも、次の①又は②のいずれかに該当する場合は、その売却損益を、収益事業の損益に含めないことができます(法基通15-2-10)。
① 概ね10年以上にわたって所有していた不動産
② 収益事業の全部又は一部を廃止し、その廃止した事業に使用していた不動産
特例が認められている理由は、現行の収益事業課税のもとでは、固定資産の値上がり益(キャピタルゲイン)について、原則としてこれを課税対象にしないという建前がとられているからです。不動産を長期にわたって保有している場合は、その売却益が主としてキャピタルゲインであると考え非課税にしているものです。
売却に際して、土地の区画形質の変更又はマンションを建設するなどして生じた付加価値は、キャピタルゲインではないため、「不動産販売業」として課税されます。特例により非課税となる売却損益を算出する際、このような付加価値が含まれている場合は、その売却損益から除くこととされています(法基通15-1-12、法基通15-2-10)。
この特例は、いわゆる「できる規定」のため、売却損が生じた場合は、原則どおり収益事業の損益とすることができます。
補足
本文では「不動産」として説明していますが、「固定資産」全般について同様の取扱いです。
本文では「宗教法人」として説明していますが、法人税法上の「公益法人等」全般について同様の取扱いです。「公益法人等」とは、学校法人、一般社団法人等(公益社団法人・公益財団法人及び非営利型法人に該当する一般社団法人・一般財団法人)、社会福祉法人、宗教法人、公共法人に含まれない各種の事業団等が該当します(法2六、別表二)。